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FITからの自立とコネクト&マネージ 研究委員に聞く

2017年7月、経産省は「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題」 を整理、公表した。研究会を振り返って、いま思うことを研究会委員の一人である松本氏に聞いた。

論点を網羅的に整理
今後は時間軸が必要

今回の研究会では、5回にわたる議論の中で、再生可能エネルギーの大量導入における重要な論点は網羅的にすべて整理できたと思います。ただし、時間が限られ十分に議論できなかったテーマがあるのも事実です。その中でも、市場機能を活用したFIT制度からの自立化、再エネの新たな使い方の促進に関しては、今後の再エネの方向性に関わる重要なテーマでした。

2012年7月にFIT制度が始まり、特に太陽光発電を中心に導入が進みましたが、今年度の「再エネ賦課金」は一般家庭で年間1万円弱となり、需要家の負担感も大きくなってきています。今後、再エネの普及拡大に伴い、賦課金は増えていきます。それが再エネのマイナスイメージとならないように、国民負担が大きくなりすぎないようにしなくてはなりません。

そのため、FITに頼らず売電を前提としないビジネスモデルが必要です。例えば電気自動車や蓄電池を使った自家消費やヴァーチャルパワープラント(VPP)など、新しいビジネスを育てる機運が高まってきています。ただ、今回の議論では「日本の蓄電池コストは北米より4倍も高い」という現状に対して、どうやって蓄電池コストを下げて導入を図るかという具体策までは出すことができませんでした。また個人的には、需要家サイドの分散エネルギーを束ねて効果的にエネルギーマネジメントサービスを提供するアグリゲーターの育成も重要だと考えています。

一方で議論が集中したのが、「日本版コネクト&マネージ」です。電力広域的運営推進機関から、系統混雑を許容するA、B、Cの3つの基準が示されました。この中でも、原則として系統混雑が発生しない範囲で新規連系を認めるB基準の早期具体化を図っていく方向です。つまり、既存系統を最大限活用しながら、火力発電をどれだけ抑えて再エネをどれだけ受け入れるか、その仕組みづくりが喫緊の課題となっているのです。

ただこれも、電力会社によって基準となる電源設備量や、電力系統に実際に流れる潮流を想定する「想定潮流」が違うという課題があります。また、バックアップ電源である火力の稼働が大幅に低下すると適切な調整力が確保できなくなるリスクも生じます。これと関連して、調整力を確保する容量市場や需給調整市場の新たな設計について言及されました。

今回の議論は、様々な課題を洗い出して論点を整理できたことが有意義でした。時間軸での整理は次の機会とされましたので、1年後、5年後、10年後に何をどう達成していくのか、今後はその道筋を具体的にしていく作業が必要です。

経産省「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題」についての詳しい記事はこちら

プロフィール

東京大学教養学部客員准教授
松本 真由美氏


取材・文/大根田康介

SOLAR JOURNAL vol.22(2017年夏号)より転載

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