地域活性化のツールに! 新電力に必要な「リンク」とは?(前編)
2019/05/07
電力小売りの完全自由化に伴い、再エネの発電事業者だけでなく多くの新電力も「エネルギーの地産地消」を掲げている。では、実際に地域に便益をもたらしているのかどうかの判断基準は、どこにあるのだろうか? エネルギージャーナリストの北村和也氏が、地域電力の本質を解くコラム第5回(前編)。
①:福岡県「やめエネルギー」が目指すまちづくりとは?
②:岩手県「久慈地域エネルギー」が巨大都市と連携!
③:青森県「青森県民エナジー」が行う”再エネ電源保有”と”コラボ”
3つの特徴ある地域新電力を取り上げてきた「地域密着型の新電力の実力」を少し休んで、地域密着型エネルギー事業の総結集版ともいえる協議会がこの4月に生まれたことをお伝えしたい。
協議会の代表理事を筆者が務めることになったので、自らの宣伝と取られかねないが、あえて最初にそのことを記しておきたい。名前を『地域活性エネルギーリンク協議会』と付けたのは、協議会の目的がエネルギーの地産地消をきっかけにして地域を活性化することであり、目的達成のカギは地域内外のリンク(連携)にあると考えたからである。まだ未完であるが、協議会の公式WEBサイトがすでに公開されている。こちらもぜひ覗いていただきたい。
新しい定義が求められる
「エネルギーの地産地消」
電力小売りの完全自由化をきっかけに数百のいわゆる新電力が生まれ、一方でFIT制度を利用した数多くの再エネの発電所が各地に誕生した。そのうちの少なくない事業者が、「エネルギーの地産地消」を看板に掲げている。
しかし、その実態は果たしてどうなのか。本当に地域に便益をもたらしているのだろうか、個々の事例を見るにつけ、疑問は膨らむばかりである。地域に利益をもたらすかどうか、どこを見ればいいかというと最もわかりやすいのが、事業主体の地元資本の割合である。新電力や発電事業が生み出す付加価値を誰が手にするか、地元が享受できるかどうかをこの数字が示している。
小売電気事業者登録を行っている事業者のうち、いわゆる地域新電力や自治体新電力の割合は2割程度だろうか。ここでいう地域、自治体新電力は、前述の地元資本率にフォーカスして、「過半数以上が地元資本」と勝手に定義しておく。
また、再エネの発電所はカウントするだけでもたいへんだが、地元資本のものはさらに少なくなるだろう。私がよく上げるたとえだが、青森県の風力発電は9年間連続全国一位を続けているが、発電施設の97%は県外資本である。
つまり付加価値のほとんどすべてが県外に流出していて、県も頭を悩ませている。エネルギーの地産地消は、ただその地域に発電所があって、その地域にある新電力が取り扱い、小売りをしていれば達成できるのではない。発電事業と新電力事業を行う資本が地元にあって初めて地産地消を謳うことができると考える。
「地域主体の資本」
が主たる構成会員の特色
地域活性エネルギーリンク協議会に戻る。まだ、誕生したばかりの協議会ではあるが、おかげさまで全体として37団体(4月22日現在)の参加をいただいている。そのうち、いわゆる地域新電力、自治体新電力が15社、また、地域の発電事業者(当然、再エネ施設を保有)が7団体(一部はNPO)となっている。
いずれも過半が地元資本であり、地元資本100%の企業が圧倒的に多い。生まれる付加価値は、その割合の通り地域に落ちる。東京や大阪などの大資本の事業者から見れば、規模感は比べようもないが、近ごろよく言われる“新電力の不振”とはやや離れて、堅実な運営や地域に即した取り組みが行われている。
このコラムで紹介した、やめエネルギー㈱、久慈地域エネルギー㈱、青森県民エナジー㈱もそろって発足から入会している。また、会員のカテゴリーとして、『地域、学術会員』を設定していて、自治体、大学など7団体が参加している。実は、中身がなかなかユニークである。
さらに、協議会のもう一つの特色が、サポート会員の存在である。これは地域とはやや離れた存在であるが、真の「エネルギーの地産地消」から地域の活性化を導き出すために、地域の事業者などを支援するために保有する技術やノウハウを提供することがその役割である。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ