カーボンニュートラルを実現するために 2050年を見据えたこれからの10年
2021/05/28
2050年カーボンニュートラルを実現するためにこれからの10年、何をすべきか――。一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)事務局長の鈴木聡氏に伺った。
太陽光300GW超へ
まだまだ足りない導入量
2050年カーボンニュートラルに向けて、太陽光発電の果たすべき役割は、ますます大きなものになろうとしています。JPEAでは、昨年5月に『PV OUTLOOK2050』を策定し、2050年300GW(AC)という太陽光導入シナリオを示しました。
しかし、これは温室効果ガス80%削減に近づけることを想定したシナリオであり、2050年にカーボンニュートラルを目指すとすれば300GWでは足りません。300GWは現在の太陽光導入量の5倍以上となる数値ですが、さらに大きな導入を実現していかなければならないのです。
FITからの自立に向け
今後10年で達成すべきこと
そのためには、これからの10年が重要な期間となります。FITから自立し、太陽光発電を主力電源とするための土台をつくっていく必要があります。FITからの自立に向けては、「コスト競争力の向上」「多様な価値の創出」「電力市場への統合」に取り組み、そして、「地域との共生」「長期安定稼働」「系統制約の克服(空き容量・調整力の確保)」がその土台となります。今後10年間でこれらを確かなものとし、300GWを超える導入の道筋を付けていくこと。それによって太陽光発電は大きな自立導入期へ進むと考えています。
2050年カーボンニュートラルを実現するためには、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーを最大限導入していくことが不可欠です。現在、『第6次エネルギー基本計画』策定に向けた検討が進められていますが、再生可能エネルギーの導入量について、事業者の意欲を沸き立たせるような目標が設定されることを期待しています。
太陽光の導入場所として
非住宅建物・農業関連が重要
300GWを超える太陽光発電を導入するためには、それを可能にする場所がなければなりません。太陽光発電の適地が、そんなにも残されているのかと懸念される向きもありますが、十分に確保可能な数字なのです。経済産業省・NEDOの調査でも、約700GWのポテンシャルが報告されています。
JPEAの『PV OUTLOOK2050』では、想定導入場所を11に分け、300GW(AC)導入時の、それぞれの導入量を算出しました(表)。戸建て住宅や集合住宅にはまだまだ導入の余地がありますし、非住宅建物への導入が本格化するのはこれからです。ソーラーシェアリングなどにより農業関連への導入が進むことも期待されます。耕作地・耕作放棄地を合わせた導入量は、70GW(AC)以上に達することを想定しています。また、水上空間にも大きな可能性が残されています。今後の技術開発により、変換効率の向上や軽量化などがさらに進めば、設置可能な場所はいっそう広がっていくと考えています。
2050年300GW(AC)における想定導入量
出典:太陽光発電協会
コロナ禍を超えて
ビジネスモデルの創出へ
コロナ禍のなか、再生可能エネルギーを取り巻く環境は大きく変わろうとしています。制度改革への対応にも迫られ、これからのことを心配されている事業者の皆さんも少なくないと思います。一方で、新たな事業の機会が、様々な形で生まれつつあるのも事実です。
JPEAとしましても、新たなビジネスモデルの創造に貢献していきたいと考えています。2050年カーボンニュートラルに向けて、太陽光発電の価値を高めていきましょう。
PROFILE
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA) 事務局長
鈴木 聡氏
1985年鐘淵化学工業株式会社(現 株式会社カネカ)に入社。研究開発部門、知的財産部門、研究企画部門などを経て、2019年6月より現職。
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.36(2021年冬号)より転載