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欧州の猛暑は単なる異常気象なのか 記録的熱波の原因と、温暖化への意識改革

6月、フランスのパリで暑さをしのごうと市民が運河に次々と飛び込む映像がニュース番組で何度も流れた。今年、日本超えの気温44℃という驚愕の熱波が、欧州を襲ったのである。その原因と深刻な温暖化の実態などをまとめる。

<目次>
1.平年を10度以上上回る強力な熱波、仏原発の停止も発生
2.世界平均の2倍を超える欧州の温度上昇
3.『異常気象』か、『常態化する気候変動』なのか

 

平年を10度以上上回る強力な熱波、
仏原発の停止も発生

欧州の熱波はまず5月末に起きた。第一波である。まずフランスやスペイン、イギリスで、この時期には通常ありえない30℃を大きく超えた気温を記録した。
続く6月にはさらなる熱波が襲う。フランス気象局は6月23日を「観測史上最も暑い日」と発表した。南西部のボルドー近郊で44.3℃を記録し、パリ市内でも前日44℃に達したとされた。
 

欧州の平均気温平年差の分布(6/21~6/28) 出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/press/2607/08a/eu_heatwave20260708.html)

 
日本の気象庁は、7月初旬にわざわざ「ヨーロッパの記録的な高温とその特徴について」とプレスリリースを出している。そこでは、「ヨーロッパでは、2026年6月21日から28日頃にかけて、長期間にわたり広い範囲で顕著な高温の日が続き、平均気温は平年を10℃前後上回った」と説明している。

世界気象機関(WMO)は顕著な熱波と報じた。デンマーク、ポーランド、ドイツ、チェコ、ベラルーシ、ハンガリーで、各国の最高気温記録を更新している(注:6月の最高ではなく、国としての最高気温)。

元々夏でも気温がそれほど上がらなかった欧州では、エアコンの普及率が2割程度と低く、熱波は各地で熱中症などによる多数の死者を生んだ。
さらに、河川の水で冷却を行っているフランスの原発が予防的な措置として停止する事態も招いている。今回の発電ロスはわずかであるが、将来的に何倍にもなる可能性があると予想されている。
 

世界平均の2倍を超える
欧州の温度上昇

4月末に発表された「欧州気候報告2025」(EUの地球観測プログラムCopernicusのまとめ)によると、昨年2025年の欧州の平均気温は過去2番目の高さを記録した。
下のグラフは、世界の10年毎の温度上昇をエリアごとに示している。それによると、欧州は+0.56℃で、世界平均の0.27℃上昇の2倍以上である。産業革命前からの比較では+2.5℃で、パリ協定の目指す1.5℃未満をはるかにオーバーしている。

欧州気候報告2025:https://climate.copernicus.eu/esotc/2025
 

世界のエリア別の10年間気温の変化(1991-2020平均との差) 出典:コペルニクス気候変動サービスなど(https://climate.copernicus.eu/sites/default/files/custom-uploads/ESOTC-2025/ESOTC-2025-report.pdf)

 
2025年の欧州は、春から夏にかけて干ばつが起き、5月には欧州全体の3分の1で農業に悪影響がでた。また、大規模な山火事はスペインを始めとした南ヨーロッパから、キプロス、イギリス、オランダなどに及んだ。
 
では、なぜ、欧州での気温上昇が激しいのであろうか。

実は、世界で一番温暖化が進んでいるのが北極圏で、前のグラフでも+0.75℃と世界平均の3倍を示している。欧州は、北極圏に隣接し強い影響を受けている。特に北欧の北極圏に近い地域では、昨年の7月に30℃に達する事態が起きた。

この他、温暖化によって北大西洋海流が暖められたことや、日本の猛暑や豪雨にも関与している偏西風の蛇行の影響などが指摘されている。さらに、大気汚染の劇的な改善によって日射が直接地表に届きやすくなったという、皮肉な理由も挙げられている。
 

『異常気象』か、
『常態化する気候変動』なのか

引用した欧州気候報告では、欧州での気温上昇について、「気候変動がヨーロッパの温暖化を増幅させている」と地球温暖化との関係を指摘している。また、国際的な科学者ネットワークであるWorld Weather Attribution(WWA)は、「化石燃料によるCO2排出が続いていることが直接的な原因」、「人為的な気候変動なしでは起きえなかった」とCO2との関連を明言している。

つまり、長年の人類による温室効果ガスの排出によって起きた気候の変動であり、突発的で一過性の“異常な出来事”ではないとする。いわば『新たな常態化』の出現である。

一方、日本の気象庁のスタンスは微妙に違っている。
今回取り上げたプレスリリースにも、温暖化の文字はなく、気候変動とも書かれていない。実は、気象庁は、気温上昇と地球温暖化との関連について非常に慎重な立場を取っている。気象庁のWEBサイトの「よくお寄せいただくご質問」に、「気候・異常気象について」の欄がある。
 

気象庁のWEBサイト「よくお寄せいただくご質問

 
そこでは、世界各地の熱波を「個々の異常気象」としたうえで、原因に関する質問に対し「地球の気候システムに元々備わった性質であり、地球温暖化が原因で発生したと言うことはできません。」と回答している。一方で、長期的な気温上昇は、「地球温暖化の表れであると考えられます。」とも書いている。一つ一つの事象では言えないが全体で見ると温暖化の影響、という理屈で正直わかりにくさが残る。科学的に慎重なのは仕方ないかもしれないが、この扱いは、日本のニュースや新聞などの報道にも影響しているように映る。

マスコミでよく使われる表現は、「異常気象」であり、地球温暖化との因果関係をコメントすることが非常に少ない。一方、ドイツなど欧州での報道は、温暖化のため、と関連づけることが普通である。

地球温暖化への対応については、いくつかの国際的なアンケート調査が行われているが、個人的な見解を聞かれる場合、日本(つまり日本人)の結果は、ことごとく関心が低く、消極的である。
 

イプソスの調査、「個人が今すぐ気候変動に対処する行動を取らなければ、次世代の期待を裏切ることになる」への回答結果(https://www.ipsos.com/ja-jp/climate-change-report-2025)

 
2024年末から2025年初に世界32か国で行われた、イプソスによる調査では、「気候変動に対する個人の行動が必要だと感じる」に同意する日本人の割合は40%に過ぎず、32か国中最下位であった。しかも2021年の調査から大きく減らしている。調査した32か国の平均は64%、トップは82%のフィリピン、日本の一つ前のアメリカでさえ、51%と過半数を超えている。
実は、「必要だと感じない」との答えも日本は17%(平均13%)と特に高いわけではない。どちらにも回答しない、いわば無関心(わからない)の答えが53%と圧倒的に高いのである。

断定はできないが、日本人の地球温暖化問題へのいわば無関心を招いた原因の一つに、現在進行形の気候の変動と温暖化の関係を曖昧(あいまい)にしてきたことがあるような気がしてならない。
確かに、災害大国である日本では、天気は人知の及ばないこと、との諦観(ていかん=あきらめ)があるかもしれない。しかし、ほぼすべての学者や研究機関が、地球温暖化は人間の起こしたこととの結論を出している。より良い地球を子孫に残すため、家庭レベルの再エネ導入など個々人の取り組みから始めると同時に、政府にも強く働きかけることが今こそ必要であろう。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
 



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アイキャッチ画像:©Melinda Nagy/Shutterstock.com

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