大手電力9社 2020年代後半に需給管理システムを統一へ
2023/09/05
大手電力の送配電10社は9月1日、需給管理システムを統一するための新会社を設立した。地域間の電力融通をしやすくするため、2020年代後半を目標に需給管理システムを統一する。
大手電力送配電10社が
新会社を設立
次期中央給電指令所システムのイメージ図(出典 東京電力パワーグリッド)
北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、北陸電力送配電、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の大手電力の送配電10社は9月1日、「送配電システムズ合同会社」を立ち上げた。沖縄電力は需給管理システムを統一しないが、新会社に参画する。出資比率は沖縄電力が1%で、ほかの9社は11%ずつ。
電力の需給調整は、各電力会社の「中央給電指令所」が実施している。使用する電気の量は、季節によってはもちろん、1日のなかでも大きく変動する。このため、24時間常時監視して、刻々と変化する電気の使用量に合わせて、発電量を調整し、電気の周波数を一定に保っている。
需給管理システムを統一することで、一元的な情報公表、系統制約を考慮した全国一括での最適な経済運用の実施、全国規模でのレジリエンス確保とコスト削減の両立、制度変更への拡張性・柔軟性の確保などを目指すとしている。仮に大規模な地震などによって中央給電指令所の機能が停止しても、ほかの電力会社の司令所でバックアップすることが可能となる。多額の費用がかかるシステム改修費も削減することができる。各社ごとに、現在のシステムの更新時期が違うため、2020年代後半から順次導入を始める計画だ。
電力データを集約し
全国規模でレジリエンス強化
電力データ集約システムのイメージ図(出典 東京電力パワーグリッド)
新会社では、電気の使用データを集める「電力データ集約システム」も立ち上げる。このシステムでは、一般送配電事業者からの業務受託により、各家庭の電力データを一括して集約し、自治体や電力データ管理協会に提供する。災害などの緊急時には、各自治体に電力データを提供し、災害時の事故対策や早期復旧といったレジリエンスの強化につなげる。平常時には、電力データ管理協会を通して、データ利用事業者に本人の同意を得た個人データを提供し、高齢者の見守りや環境対策などの社会課題の解決に貢献することが期待される。今年 9 月から月次・日次データの提供を開始し、2025 年上期以降、リアルタイムのデータ提供を計画している。
DATA
取材・文/高橋健一