政策・制度

送配電各社、収入見通しの変更申請 発電側課金に対応

一般送配電事業者10社は9月29日、電力会社から徴収する託送料金の算出根拠となる収入見通しの変更承認申請を経済産業省に提出した。2024年度から始まる予定の発電側課金の導入に伴う託送料金体系の見直しに対応した措置。

2024年4月から
新たな託送料金を適用

東京電力パワーグリッドは平均収入見通しを580億円引き上げ

東京電力パワーグリッドは平均収入見通しを580億円引き上げ

託送事業の収入見通しの変更は、託送料金制度(レベニューキャップ制度)の導入に伴い、2022年12月に承認された現行の収入見通しに、2022年度の実績値、容量市場への拠出金などを反映させた。提出した収入見通しは、経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会の専門会合で審議する。了承されれば、2024年4月から新たな託送料金単価が適用される予定。

東京電力パワーグリッドは、2024〜27年度の1年あたりの平均収入見通しを1兆4709億円と、2022年12月の見通しよりも580億円引き上げた。レジリエンス強化やカーボンニュートラル促進に向けたプッシュ型設備形成など、事業計画の各種目標達成のための必要投資・費用が増えるとともに、調整力費用等の制御不能費用が過去に比べ大幅に増加する見込みであることを反映した。

関西電力送配電は、2024〜27年度の1年あたりの平均収入見通しを7226億円と、2022年12月の見通しよりも552億円引き上げた。高経年化対策費用の増加に加え、調整力調達費用などの外生的な需給関連費用の増加や、カーボンニュートラル実現、レジリエンス強化などに資する次世代投資の推進に伴い費用が増加したと説明している。

北海道電力ネットワークは、2024〜27年度の1年あたりの平均収入見通しを2012億円と、2022年12月の見通しよりも103億円引き上げた。再エネの拡大、高経年化に係る投資や電力の安定供給に必要な需給バランスの調整に係る費用の増加を見込んでいる。

東北電力送配電は、2024〜27年度の1年あたりの平均収入見通しを4789億円と、2022年12月の見通しよりも10億円引き上げた。2022年度の夏と冬に電力需要が高まり、追加で電力を確保したが、脱炭素に向けた送配電網のバージョンアップやレジリエンス強化、さらにはDX等に資する電力ネットワークの次世代化などの費用を見込んだと説明している。

九州電力送配電は、2024〜27年度の1年あたりの平均収入見通しを5017億円と、2022年12月の見通しよりも42億円引き上げた。⾼経年化設備の更新投資が増加することなどに伴うCAPEX関連費⽤の増加や、送配電ネットワークの次世代化に向けた次世代投資の増加などを見込んでいる。

新たな託送料金単価
現時点では未定

託送料金については、2024年度から小売電気事業者に加え、新たに発電事業者も負担する仕組みが導入される。申請が承認された場合の託送料金単価については、今後発電側課金の導入による影響を織り込んで算定するため、各社とも現段階では未定としている。

今年4月に導入されたレベニューキャップ制度は、送配電事業者の利益を確保せず、各社にコストの効率化を促すことで、収入の中から利益を捻出させようという取り組みである。これまでの託送料金は、「総括原価方式」によって定額の利益が約束されていた。発電・送電・人件費などの「電気を安定供給するために必要な費用」に「一定の利益」を上乗せした金額が、電気の販売収入と同じになるように料金を決めていた。このため、利益が保証されているためにムダな設備投資が増えやすい、利潤が一定であるため、コストカットなど企業努力が行われにくいなどの課題が指摘されていた。

新しい託送料金制度「レベニューキャップ制度」は、国が一般送配電事業者に対して「収入上限」を設け、その上限の範囲内で託送料金を設定する。一般送配電事業者が企業努力によってコストを削減すれば、それだけ利益が増加する。そのため、一般送配電事業者が積極的に効率化に取り組むことが見込まれる。一般送配電事業者がコスト削減に成功すれば、翌期のレベニューキャップはその分下がっていくため、長い目で見れば託送料金が安くなることも期待される。

DATA

一般送配電事業者10社から託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請を受理


取材・文/高橋健一

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