政策・マーケット

太陽光発電自立の時 FITからFIPを経て自産自消へ

2019年9月3日、大規模太陽光発電設備を対象にした第4回入札の結果が公表された。最低落札価格は1kWh当たり10.50円と、実質的にクリーンエネルギー最安価となったが、次は小規模設備も含めた全面的な卒FITに備えねばならない。環境経営コンサルタントの村沢義久氏による連載コラム第10回。

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高騰する賦課金対策

入札制度は、2017年4月に施行された改正FIT法により、大型設備(2MW以上)を対象として始まった。法改正の背景には、2012年にFITが開始されて以降、太陽光発電投資の人気が高まり、その増加が予想を上回ったことがある。

太陽光発電の増加自体は当初の目論見通りであり、FIT制度の成功を意味するものだが、その「副作用」として、電気の買取費用が急増し、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(再エネ賦課金)という形で国民負担が増加してしまったことが問題だ。



再エネ賦課金とは、FIT制度によって電力の買取りに要した費用を、電気のユーザーに負担させるもので、電気料金の一部として上乗せされている。その賦課金は、2019年5月から1kWh当たり従来の2.90円から2.95円に上がった。

さらに、単価が上がっただけでなく、買取量も増え続けている。その結果、平均的な世帯モデル(従量電灯A 、1か月当たりの使用量260kWh)の負担額は、月額754円(年額9,048円)から767円(同9,204円)に増加した。

長野県(中部電力管内)に住むM氏の2019年8月の実際の明細を見てみると、合計請求金額12,878円の内、約1割に当たる1,312円が再エネ賦課金だ。

筆者は、FIT導入当時、賦課金が300円を超えると消費者からの拒否反応が強くなると予想したのだが、実際の消費者は非常に我慢強く、「再エネ推進のためなら賦課金やむを得ず」と考えているかのようだ。とは言え、これ以上の負担増は避けなければならない。

ポストFITは入札とFIP

筆者は、熱心な太陽光発電推進派で、自らも複数の設備を所有・運営しているが、高値買取制度は長期的に維持できないと言い続けてきた。だから、「卒FITも必然」と考える。その一つの方法が入札制度というわけだ。

太陽光発電の第1回入札は2017年9~11月にかけて実施された。最低落札価格は17.2円で、2017年度の買い取り価格である21円より3.8円も安かった。続いて、2018年夏に行われた第2回入札では、落札件数ゼロで失敗(入札の上限価格を下回る応札が無かった)。

次に、同年12月に発表された第3回入札では、最低落札価格14.25円で、同年のFITである18円を大きく下回っている。

こう見てくると、太陽光発電の買取価格を下げようという入札制度の目的は達成されつつある。なお、第1回から3回までは、出力2000kW以上(特別高圧)が対象だったが、第4回から500kW以上に拡大されている。

さて、この入札制度は、競争原理導入の観点からは効果的だが、低圧(50kWh未満)設備など、小型のものには向いていない。参加者が多くなりすぎて実施が難しくなること、および、小規模参加者にとっては入札の準備や実施の負担が大き過ぎるからだ。

そこで、競争原理導入のために他の方法も検討されていて、その一つがFIP(Feed-in Premium(フィード・イン・プレミアム)制度。経産省が2019年6月10日に開催した「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」の中で出てきたものだ。

FIPの場合、発電事業者は競争原理に基づき、電気を市場で売ることになる。いわばFITという保護された温室から離れ、厳しい外界に出ていくわけだ。ただし、まだしばらくの間は市場価格そのままで売ったのでは利益の確保が難しい。そこで、事業者にプレミアム(割増金)が支払われることになる。



海外の例を見てみると、FIPには大きく分けて、①プレミアム固定型、②プレミアム変動型の2種類がある。前者は市場価格に沿って売電価格も変動するので市場型に近く、後者は売電価格が固定されるので現在のFITに近い。

それぞれに長短があるのだが、最近では、両者の中間的な、③上限・下限付きプレミアム固定型の導入が検討されているようだ。

事業者にとってはこれからが本番

見直し後の新制度は2021年4月に施行されることになっているが、2019年9月上旬現在、まだFIP制度の導入が決まったわけではなく、ポストFIT制度の候補の一つとしてあげられている段階だ。

現時点では、小規模太陽光発電についてはFITが当分維持されるという見方が有力で、一方、大規模設備については入札制度と並行してFIPも導入されるようだ。いずれにしても、中長期的にはFITが廃止されることは間違いない。

事業者の立場からすると、「売電価格がさらに下がり続ける」ということで、事業環境としては厳しくなるが、力のない者が淘汰されるのは当然。自信ある者にとっては、むしろこれからが腕の見せ所だろう。

もう一つ留意すべきことは、電力料金については今後は上げ圧力が働きそうなことだ。理由の一つは原発の停止・再稼働の抑制。足元では、「テロ対策」不備のため、来年3月と5月に川内1、2号機(九州電力)が相次いで停止することになっている。

その後、現在稼働中の他の7基も順次止まることになる。さらには、石炭火力発電も国際世論の高まりの中ではこれ以上は増やせないだろう。

FIT制度開始時点では、買い取り価格40円に対して、家庭用の電力料金は24円程度(基本料金を含まないで計算)。したがって、自分で使うより電力会社に売る方がずっと得であった。

しかし、売電価格と電力料金が逆転した現在、「自分で使った方が得」という状況になりつつある。今後は、太陽光発電の究極の姿である「自産自消」が加速することは間違いない。

プロフィール

環境経営コンサルタント(合同会社 Xパワー代表)

村沢義久


東京大学工学修士。スタンフォード大学MBA。経営コンサルティング会社日本代表、ゴールドマンサックス証券バイスプレジデント(M&A担当)などを歴任の後、2005年から2010年まで東京大学特任教授。2010年から2013年3月まで同大学総長室アドバイザー。2013年4月から2016年3月まで立命館大学大学院客員教授。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。Twitterは@murasawa。

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