自家消費の次なる手段「自己託送」のメリット・デメリット
2021/03/17
自家消費の次なる手段として注目されている、自己託送制度。遠隔地の自社発電所からの電気を利用でき、コスト削減効果も高い。ただし、計画値同時同量のインバランスペナルティなどの義務も発生する。メリット・デメリットを正しく理解したうえで活用したい。
遠隔地の自社発電所の電気を
送配電網を通じて供給する
(出典:経済産業省 第2回制度設計ワーキンググループ)
自己託送とは、遠隔地にある自社発電所で発電された電気を、送配電ネットワークを通じて自社設備へ送電する仕組みだ。小売電気事業者を介さず電気の供給ができる。通常の自家消費では、発電所は自社の屋根や隣接地に立地していなければならないが、自己託送制度を活用すれば遠く離れた発電所からの電気を活用できる。
加えて、一般送配電事業者が自己託送専用に設定した割安な託送料金で送電が可能だ。自己託送の託送料金は、基本料金のない従量料金一本となっている。さらに、自己託送による電気には再生可能エネルギー発電促進賦課金がかからない。遠隔地の自社発電所だけで、自社の電気をまかなえない場合には、小売電気事業者による供給と併用もできる。
自己託送は、2013年の電気事業法改正で認められた制度だ。太陽光発電の自家消費ニーズの高まりによって、今注目を集めている。
適用には非FITなどの要件あり
インバランス負担も発生
自己託送が利用できるのは高圧と特別高圧の発電所とされ、電気の販売が目的ではないことが条件となる。そのため非FITの発電所が対象だ。また、発電する事業者と供給先の事業者とが同一、あるいはグループ会社などの「密接な関係」を有することも必要だ。
さらに、発電事業者や小売電気事業者に義務付けられる「計画値同時同量」も守らなくてはならない。「計画値同時同量」では、電気の需要と発電量を30分単位で予測し、乖離がないように実際の需給と計画値を一致させていかなければならない。実需給と計画値とのズレは「インバランス」と呼ばれ、この量に応じてペナルティが課される。
FIT制度においては、インバランス特例によってペナルティが免除されているが、自己託送では適用される。ただし、一般送配電事業者との協議が整えば、±10%内のインバランスであればペナルティは発生しないなどの措置も可能だ。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)