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緊急コラム第三弾「JEPX高騰がもたらしたもの」

JEPXの異常な高騰の背景にあるのは、日本社会の大きな問題点である。エネルギージャーナリスト北村和也氏が、JEPX高騰について深掘りする緊急コラム第3弾。

緊急コラム第一弾『JEPX高騰の問題点と対応策』はこちら!

緊急コラム第二弾『年末年始のJEPXで何が起きたのか』はこちら!

※2021年3月7日執筆※

LNGの在庫は安全圏にまで戻し、JEPXのスポット価格は震度6の地震があってもさほど影響を受けなかった。河野行革相のタスクフォースが強い提言や要望を行ったり、自民党の再エネ議連が重ねて勉強会を開いた上、国会で梶山経産相に質問を行ったりはしたが、その後、新電力への支援策や市場システムの改革などが動く気配はあまりない。時間が経つにつれ、喉元過ぎれば熱さを忘れる感が漂ってきている。筆者は複数の機会で「奇貨とすべき」と書いているが、やや“むなしい感覚”が否めない。

問題は、高騰の原因究明が進まないこと

前回のコラムで、『高騰の整理』を進めてきた。
何度も繰り返したように、高騰の原因は、エネ庁が示すように「実質的な売り入札の減少により売り切れ状態が継続して発生し、スパイラル的に買い入札価格が上昇したこと」であった。

日本全体の電力の需給バランスは、短い時間「ひっ迫」はしたが基本的に問題なく、節電要請せずに停電にも至らなかった。

問題は、電気が足りていたのに異常なスポット価格が一か月以上も続いたことで、その解明はなされていない。すでに、問題そのものが変化している気さえする。ひとつは、「いまだに原因究明ができないこと」、そして、それなのに「現状での対応策や今後の対策がなし崩し的にうやむやになっていくこと」が、別の意味での問題であるように思えてきた。

「高騰の整理」は、どうついたか

前回、高騰の整理を途中まで進め、このコラムでは12月26日に売り入札が激減(次図の赤丸枠)した理由として、「旧一電の需要増加」と一部の旧一電の「グロス・ビディングによる売買入札の取りやめ」(共にエネ庁の1月25日の配布資料で、売り札の減少理由として挙げられている)を説明し、「26日以降の価格上昇と高値期間の継続」について整理する予定であった。

資源エネルギー庁は、2月の後半に開かれた委員会でかなりまとまった資料を出してきている。その中で、例えば、グロス・ビディングでは、これまで「一部の旧一電」となっていたものを、関西電力、中国電力、北陸電力の3つであることが公開され、また、それぞれの実施、停止に関するデータも示された。2月25日には、旧一電の公開ヒアリングも開かれている。ヒアリングでは、各旧一電の発電所の運転が現場任せになっていて、燃料制約の実施も統一されていないという指摘も出た。

筆者の整理の要点は、結局、疑問点のあぶり出しになってしまった。
グロス・ビディングは、停止をした場合でも、原則として市場での売りが減った分、買い戻し量も同じだけ減るので影響はないことになっている。しかし、12月中旬から下旬に行われた3回のグロス・ビディングの停止では、いずれも買いの量が減り切ってはおらず、その時スポット価格は大きく上昇している。これは、そのまま疑問につながる。


(出典:「スポット市場価格の動向等について」1月25日、エネ庁委員会資料)

 

12月末以降に起きた不可思議な出来事

また、旧一電の需要増というが、12月26日以降に日本全体の需要が大きく減っているのに増えたことが単純な疑問として浮かぶ。

さらに、不思議な説明がエネ庁から提出されている。

もともと「旧一電の需要増を、売り入札の減少が起きた一因(1月25日資料)」としているが、2月5日のエネ庁配布資料では、「12月29日から1月21日までの間は、(旧一電・JERAの)買い約定量が売り入札量を上回り、買越しとなっていた」とある。旧一電の需要が増えて売りを減らしたのに、それでも足らずにさらに市場で買いを入れていたということになる。

ここで、全体の需要バランスと市場でのバランスが別物であることにもう一度注目する必要がある。

全体の需給バランスが取れている場合、一時的なスパイクが起きても、市場に“予備または余剰の売り札”が注入されて、市場が収まっていくというのが本来の流れである。ところが、今回、市場での売り不足の局面で、旧一電内での直接の取引がさらに増やされ(=売り入札の減少)、さらに足らずに買いにも回って(買い入札の増加)いたらどうであろう。マーケットは、売り買いの差が拡大しパニックになってもおかしくない。

実際に、前のグラフのように、1月4日以降、市場での買い札が大きく跳ねて、7日前後に450万kWhほどまで膨らみ、その後スポット価格の最大値250円などにつながっている。確かに最も「ひっ迫」していた時期だが、需給は最終的にバランスした。

旧一電といっても、もともとは独立した沖縄を含めた10の地域独占会社である。今は発送電の分離などもあり、小売りも子会社、孫会社など細かく分かれている。旧一電がまとまって市場で売り買いをしているわけではない。「燃料制約」に統一感が無いように、電力の売り買いもそれぞれである。ましてJEPXはエリアに分かれている。

複数のメディアで、ある種の『解』が文字になり始めている。もともとある旧一電の中にあった需要がなんらかの出来事で市場に入り込んだというのである。これが年末年始以降に買いが大きく増えた理由とされている。一方、減った売り札が旧一電によって複数の新電力に回り、新電力らはそれを市場に売って莫大な利益を得たことになっている。これらの動きは関連しているとされている。

真偽のほどは筆者の立場で判断できないが、実際に決算報告で莫大な利益を計上した会社はある。これが事実であれば、今回、市場の安定とは逆方向に電力取引のいくつかのプレーヤーが動いたことになる。全体需要が満たされているにもかかわらず、ごく一部の不規則な動きで市場だけが異常をきたしたとすれば、その責任はどこにあるのだろうか。また、今後再び同様なことが起きる心配はないのだろうか。基本的にほぼすべてのデータは把握可能である。疑念は拭い去られなければならない。

早期の収束を計るエネ庁

一方で、エネ庁などは、タスクフォースなどから強い要請のあった新電力への支援策に対して否定的な姿勢を強めている。今後の市場システム改革についても、必ずしも前向きには映っていない。早く終わったことにしたい気持ちの表れに見えるのは、私だけだろうか。

今回の高騰をテーマとしたエネ庁関連の委員会が2月17日、25日と開かれた。
そこでは、サーキットブレーカーなど市場システムのあり方などが具体的に取り上げられた。
エネ庁が議論のためとして示した内容をまとめておく。

①スポット市場自体への上限価格の導入について
慎重な検討が必要

②取引停止について
本来は、需給ひっ迫時には、市場価格がその時点の電気の価値を反映し、追加的な電源やDR等が市場を通じて拠出されるメカニズムが働くことが望ましい

③インバランスの収支について
何ら事前の策を講じなかった事業者だけに着目して、市場参加者に対し、市場取引の結果を遡及的に見直すような措置を講ずることは慎重であるべき

取引停止については、原則論に終始しているだけであるが、今回の高騰で、市場価格が電気の価値を反映していなかったことは自明であり、さらにメカニズムも働いていなかった。問題のポイントがずれていると言わざるを得ない。

インバランス収支では、タスクフォースなども求めている新電力に対する支援策を頭から拒絶している。事象の解明を待たずして、あたかも異常ではなかったような姿勢で結論付けるのはいかがなものだろうか。また、事前の対応策も結果も様々ある中、実態を無視した単純な善玉悪玉論に近い論理展開もいただけない。実績を急ぎ、送配電事業者に発生した余剰利益の賦課金への“返還を遡及して”行うこととも一部矛盾している。

最後は、突然のこんな話で終わりたい。

経済の各種統計からみて日本が先進国から脱落していることが、最近あちこちで語られ始めている。政治や官僚の劣化はさらに目を覆うばかりである。そもそもオリンピックを開いてよい国なのかとさえ思う。

起きた過去は、当たり前だが取り返すことはできない。しかし、それを糧にできないようでは、とても日本の復活などあり得ないであろう。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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