世界では新エネビジネスが実を結ぶ! 日本のコンセンサスはどこに?

世界では、日本とは異なるまったく新しいエネルギー体系が姿を現しつつある。一方で、日本の遅れは目を覆いたくなるほどだ。この現状をどうすればよいのか。環境エネルギー政策研究所 所長の飯田哲也氏が語る。

新たなエネルギー体系が出現
従来の産業の「大崩壊」も

世界では、日本とは異なるまったく新しいエネルギー体系が姿を現しつつあります。構成要素は主に、太陽光発電、風力発電、蓄電池、電気自動車、ヒートポンプで、この五本柱が今後の世界のエネルギー政策体系の中心になるでしょう。

太陽の光や風を直接電気に変換する太陽光発電や風力発電によって、石油、石炭、化石燃料といった一次エネルギーの時代は終わりを迎えようとしています。エネルギー体系のみならず、産業すら抜本的に変わり始めた今、保守的といわれる国際エネルギー機関(IEA)でさえ、従来の産業のディスラプション(大崩壊)が起きつつあることを認めています。

再生可能エネルギーの年間純増加量
(2017-2022年) 、IEA


出典:IEA ライセンス: CC BY 4.0

20年先をひた走る世界の国々
電気料金で「儲かる」が日常

米国では、テスラが住宅の蓄電池と太陽光発電を数多く集めて、電力市場の取引に応じて充放電を制御することで、経済的メリットを提供する電力会社「テスラエナジー」を展開しています。このサービスで、電気料金が上がるどころか「今月は560ドル(約8万円)儲かった」ということが日常茶飯事になっています。

地域熱供給の先進国デンマークでは、電力市場がネガティブプライスになるときに電気ボイラーで収益を得ながら温水を作り、需要拡大するなど、すでに60%を超えてさらに拡大していく自然変動再エネを最大限受け入れる柔軟な電力市場も出現しています。

また、欧州連合(EU)では、太陽光発電や陸上風力発電など地域資源を利用する際には、「エナジーコミュニティ」と呼ばれる地域や市民が参加する仕組みを設けるよう加盟各国に働きかけています。

2030年に太陽光発電を全電源の80%にしようとしているドイツでは、市民50人が参加する地域エネルギープロジェクトのインセンティブとして、前年度の入札の最高価格で20年間の固定価格買取を行うとしています。太陽光発電や陸上風力発電の拡大には地域資源が不可欠で、それらの活用には市民参加が欠かせないと理解しているからこそ、再エネと地域コミュニティの共生を促す施策に力を入れているのです。

進化が加速する世界のリアル
日本はコンセンサスを急げ

地域資源の活用にあたって市民や地域との衝突が起こるのは、どの国でも同じです。それなのに、日本には解決策がないどころか、ネガティブな知見しか蓄積されていません。例えば、日本は早くから営農型太陽光発電に取り組んでいたのに、適切な普及促進策がとられず、有効なノウハウは乏しいままです。一方で、ドイツやフランス、イタリアなどでは、営農型太陽光発電は土地を立体的に利用して食とエネルギーを生み出せるとして、支援制度などで技術の発展を後押ししています。

再エネ100%に向かって疾走している国々と比べると、日本の遅れは目を覆いたくなるほどです。世界では、新しい技術や市場を活用したモデルが急速に広がり、現実が研究を追い越しています。第6次エネルギー基本計画では再エネの最大限導入を掲げていますが、政府と産業界は本気で古い考え方を刷新し、再エネを最優先で導入するという大きなコンセンサスを打ち立てるべきです。

PROFILE

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長

飯田哲也氏


自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。
X:@iidatetsunari


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.47(2023年秋号)より転載

PICK UP
注目記事
太陽光関連メーカー一覧

RANKING

  1. 1
    【新制度解説】農林水産省が営農型太陽光の省令改正・告示を公布 2027年4月施行の新制度を徹底解説
    【新制度解説】農林水産省が営農型太陽光の省令改正・告示を公布 2027年4月施行の新制度を徹底解説
  2. 2
    経産省がGX戦略地域18地域を選定、電源確保と費用負担に課題
    経産省がGX戦略地域18地域を選定、電源確保と費用負担に課題
  3. 3
    【11/10東京開催】『低圧系統用蓄電池』ビジネスの全貌 〜事業者が今知るべき最新トレンドと収益モデル〜
    【11/10東京開催】『低圧系統用蓄電池』ビジネスの全貌 〜事業者が今知るべき最新トレンドと収益モデル〜
  4. 4
    BEVが拡大する欧州とEV比率5%の日本 求められる中東危機への”根本的解決”とは|北村和也さんの再エネの達人
    BEVが拡大する欧州とEV比率5%の日本 求められる中東危機への”根本的解決”とは|北村和也さんの再エネの達人
  5. 5
    住宅への太陽光発電導入をサポートする「SOLAR JOURNAL  住宅号」10/30 発行!
    住宅への太陽光発電導入をサポートする「SOLAR JOURNAL 住宅号」10/30 発行!

MAGAZINE

vol.58 / ¥0
2026年8月4日発行

PRESS