今注目の地域新電力 その目指すべき方向とは?
2018/02/09
シュタットヴェルケと地域新電力
私がこのコラムで『シュタットヴェルケとは何か』を書いたのは2年以上前の2015年秋であった。大小各種の現地のシュタットヴェルケを見たうえで、地域エネルギー供給の主役とポジティブに紹介した。
しかし、その成り立ちなどは非常に特徴的であると書いておいた。安易に形だけを取り入れようとすると失敗しかねない。100年以上の古い歴史や交通、住宅などの市民サービス領域に踏み込んでいることだけではない。エネルギーインフラ(発電・配電、熱供給・蓄熱施設など)の多くを自ら所有し、最近まで地域独占で圧倒的な顧客を持ってまず安定している。供給先ゼロからスタートする日本の新電力とは別物である。
シュタットヴェルケと大きく夢を持つのは良いが、地に足をつけた地道なスタートが肝心である。講演では必ずここを強調している。
安売り競争と付加価値
新電力対旧電力会社の闘いがヒートアップしている。旧電力会社側の値下げ攻勢は、えげつないという言葉で表現されることも珍しくない。独禁法違反ギリギリ、自治体新電力を阻止するためとの声は、新電力側の悲鳴にも聞こえる。
体力のない新電力、特に資本の小さい地域新電力が安売り競争について行けないのは当たり前である。薄利多売、つまり原価率の高い小売電気事業では、今後は独自の付加価値を持つ者しか生き残れない。ビジネスモデルがはっきりしない新電力ブームの中で、すでに淘汰の時代が始まっている。
2018年、主役は地域新電力
悲観的な年明けを宣言しているつもりはまったくない。逆に私は、地域新電力こそ強力な付加価値を持つサバイバーだと考えている。
多くが限界費用ゼロである再エネは分散型で地域密着である。電気だけでなく、木質バイオマスなど熱利用の良き例が地方でふつふつと姿を現してきた。EV拡大で交通燃料も電気に変わり、地産となる。
地域が全てのエネルギーを生み出し余剰を中央に売ってあげるのが当たり前の時代がいずれやってくる。地域新電力はその真ん中に立ち、コントロールする主役を演じるのである。
PROFILE
北村和也/Kazuya Kitamura
エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ
SOLAR JOURNAL vol.24(2018年冬号)より転載