「2019年問題」商機に! 伊藤忠がAI活用の次世代蓄電システムを発表
2018/10/30
「2019年問題」へのリミットが迫る中、その“ピンチ”をビジネスの“チャンス”に変えようとする動きが活発化してきた。伊藤忠は、蓄電池とAIを組み合わせて効率的な電力制御を実現。さらに東電ホールディングス傘下の新電力が、蓄電池専用の電力プランをリリースした。
蓄電池とAIを連携
電気を効率運用
伊藤忠商事は、10月24日、英国のMoixa Energy Holdingsや、エヌエフ回路設計ブロック、東京電力ホールディングス傘下の新電力TRENDEと連携して、AI技術を活用した蓄電システムと、蓄電池専用の電力料金プランについて発表した。
左から、エヌエフ回路の高橋常夫会長、Moixaのサイモン・ダニエルCEO、ポール・マデン駐日英国大使、伊藤忠の石井敬太常務執行役員、TRENDEの妹尾賢俊社長、東京電力ホールディングスの見學信一郎常務執行役
2009年にスタートした太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)は、来年2019年から買取期間の10年間を満了し、順次終了する。2019年中に、50万件を超えるユーザーが対象となる。これが「2019年問題」だ。
買取期間を終えたユーザーは、電気事業者などと新たな契約を結んで再び「余剰電力を売電」するか、蓄電池や電気自動車などと組み合わせて「電力を自家消費」するか、どちらかを選ぶことになる。
こうして、蓄電池の新たな需要が生まれる。伊藤忠らは、そこに商機を見出した。
伊藤忠は、IoTプラットフォームの構築などを手がけるエヌエフ回路と共同開発した蓄電システム「Smart Star L(以下、SSL)」を以前から販売しており、2018年10月時点で累計1万台以上を出荷しているという。
今回の発表会では、北海道のSSLユーザーのインタビュー映像が流された。先日のブラックアウトの際にも、SSLを入れていたおかげで、平常時とほぼ変わらない生活を送れたという。
1万台以上を出荷しているという蓄電池「Smart Star L」
新しい蓄電システムでは、このSSLと、英MoixaのAIソフトウェア「GridShare Client」を連携する。AIが、気象予報をもとに太陽光発電の発電量を予測するほか、ユーザーの電力使用状況などを分析・学習。蓄電池の充放電を制御することで、効率的な自動運用が可能となる。
このGridShareサービスは、月額1,200円(税別)の有料サービス。ただし電気の効率運用により、月に1,500円前後の電気料金削減効果が見込めるという。
さらに、TRENDEが蓄電システム専用の新たな電力料金プラン「あいでんき」をリリース。時間帯別電力料金プランで、昼間の電力は高いが、夜間の電力が安く設定されている。夜のうちに安い電気を蓄電池にためておくことで、お得に運用できる。
発表会では、今後の展望についても説明された。将来的には、「GridShare」プラットフォームを基盤として、個人間で電力を売買する「P2P取引」や、複数の蓄電システムを群制御することで仮想的な発電所のように活用する「バーチャルパワープラント(VPP)事業」など、さまざまなビジネス展開を模索していくとした。
GridShareプラットフォームを活用した将来のビジネス展開イメージ図(出典:伊藤忠商事)
各分野で独自の強みを持つ今回の4社の協業は、再エネ活用の大きな流れを生み出す可能性がある。今後の展開に注目したい。