改正FIT法で広がる風力発電の可能性とは?
2016/11/07
”改正FIT法”で変化した風力発電の問題を、風力発電協会専務理事の中村氏に聞いた。
環境アセスとFIT認定の
切り離しがポイント
日本の風力発電には、大きな課題が2つあります。諸外国に比べて厳しい環境アセスメントと、系統連系の問題です。今回の改正FIT法では、この2つに関連して一定の成果をみることができました。私たち日本風力発電協会としても、嬉しく思っているところです。
ただし、環境アセスメントと系統連系について、改正FIT法で直接語られているわけではありません。私たちが注目しているのは、FIT認定のタイミングが変わったということです。昨年までは、環境アセスメントの手続きが最終段階に進んでからでないと、FIT認定を受けることはできませんでした。そして認定を受けた後に、電力系統への接続契約を締結するという流れでした。しかし来年度からは、接続契約の締結がFIT認定の前提となります。ここには環境アセスメントのことは記されていませんが、実際の〝運用〞において環境アセスメントとFIT認定は、基本的には切り離されるものと理解しています。
もちろん環境アセスメントは大切なことです。しかし、環境アセスメントの遅れから系統接続の申込みができず、申込んだ時に既に接続可能な枠がふさがっていた、というような事態は回避したいと願ってきました。その意味で、今回の改正は、事態改善のきっかけになるものと期待しています。
発電コスト低減に向けて
業界挙げての取組みを推進
今回のFIT見直しには、国民負担の抑制のためにコスト効率的な導入を促進するという狙いがあります。発電コスト低減はすての電源に求められていることであり、風力発電にとっても重要なテーマです。
しかし諸外国と比べ、日本における風力発電のコストは相対的に高いのが現状です。中国、アメリカ、スペインのように大量導入を実現できた国ほどコストは低く抑えられています。日本のコストが高い大きな要因は、導入が進んでいないために生産規模の拡大効果が発揮できないというところにあると言わざるを得ません。
大量導入とコスト低減は一体です。当協会としては、今後も導入拡大に向けた取組みを進めていくととも、風力発電設備そのもののコストダウン、発電効率の改善、設備利用率の向上、建設費の見直しなど、発電コストの低減に向けたあらゆる取組みを推進してまいります。
■日本における風力発電導入ロードマップ
出典:『JWPA Wind Vision V4.3』
系統連系問題を超えて
再エネ産業の発展を目指す
日本の風力発電は、昨年政府が取りまとめたエネルギーミックスの数値より、はるかに大きなポテンシャルを有しています。当協会は今年、『JWPAWindVision』を発表し、将来の風力発電導入シナリオを示しました。私たちが想定した2030年までの累積導入量は3620万kW。その後も拡大し、2050年には7500万kWに達します(表参照)。
これによる経済波及効果は2030年時点で3兆440億円、2050年時点で4兆4840億円。雇用創出効果は2030年時点19万7000人、2050年時点は29万人に及びます。
ただし、こうした効果を手にするためには、やはり系統連系問題への組みが不可欠です。短期的には、既存の地域間連系線の活用による最大限の広域運用、揚水発電の活用、きめ細かな出力制御などによる系統の最適運用が求められます。中・長期的には、風況の良い北海道・東北などの地域内送電網の強化や、北海道・東北間、東北・東京間など、地域間連系線の増強も必要になってくるでしょう。
もとより系統連系は、風力発電だけの問題ではありません。当協会としては、後も各方面と連携を取り合いながら、日本のエネルギーが抱える課題解決に向けて尽力していきたいと考えています。
一般社団法人 日本風力発電協会
専務理事 中村成人氏
1972年株式会社トーメン入社。1998年同電力事業本部第一部長就任。株式会社ユーラスエナジーホールディングス専務取締役を経て2014年7月から現職。1972年より一貫して電力分野に携わり、1998年から現在まで約20年間、風力発電事業に従事している。
取材・文/廣町公則
※『SOLAR JOURNAL』vol.18 より転載