再エネが地域の財産に?飯田市の地域環境権とは?
2016/11/15
やる気ある自治会に
強力な支援組織が助言
地域共同体が発電事業の主体となる取り組みには、飯田市が強力に後押ししています。具体的には市長が地域共同体に法人格を与えています。市民が主導して再エネ発電所建設・運営計画を進める場合、経営の素人がいきなり会社を設立するのは現実には難しいです。再エネ資源が存在する地域にある地方自治法上の認可地縁団体または市民により構成される任意団体が、事業をしようという場合、市長に申請をして認定を受けるのです。そうすることで、これらの地域共同体に対して、金融機関が融資しやすくなるうえ、再エネ発電設備をそうした組織の名義にすることも可能になります。
さらに飯田市は、大学教授や弁護士などの有識者で構成する支援組織「再生可能エネルギー導入支援審査会」を発足させました。この支援組織は地域共同体が手がける再エネ発電事業の審査・助言をしてくれます。そして支援組織の審査を通れば、市が公民協働事業と位置付けて支援します。市のお墨付きにより信頼性が高まり、資金調達もしやすくなるという好循環が生まれます。
そして市は積極的に活動する地域共同体に、資金援助をはじめとした様々なかたちで支援します。地域共同体は頑張れば頑張るほど市から厚遇されるのです。そうすることにより地域共同体間で競争が生じて、ますます地域活性化が進みます。市民による再エネの地産地消活動を後押しする権利が地域環境権なのです。
住宅用太陽光発電システム
初期費用0円で設置可能
また飯田市は地域エネルギー会社と協力して、住宅用太陽光発電システムの設置について、初期費用0円で月額定額の支払いで設置できるスキームを実施してきました。これにより飯田市では住宅用太陽光発電が広く普及しています。さらに相乗効果として、市内に設置された太陽光発電設備の施工品質が高められました。市の援助により発電設備を建設することから、施工品質の目が厳しくなり、施工技術の底上げとなります。
地域環境権は自治権の1つですが注意してほしいのは、権利を侵害されたら訴えることができるような強権ではないことです。あくまでも自分たちが主体となって行動することを保証されるという権利なのです。今後は、地域の環境に悪影響を及ぼすおそれのある太陽光発電設備の乱開発に規制をかける動きが活発になるかもしれません。
北村喜宣氏
上智大学法学部教授 環境法政策学会 常務理事
2001年上智大学法科大学院教授。2004年より放送大学客員教授就任。行政法学・環境法学を専門とし、多くの専門書を著作、長らく環境法の司法試験考査委員も務めた。
取材・文/南野彰
『SOLAR JOURNAL 』 vol.18 より転載