地熱・水力 etc

“コロナ後”の日本を変えるのは「地域の具体策」である

WHOが新型コロナウイルスを「パンデミック」と表明し、感染拡大が続いている。一方で我々は、そろそろ「コロナ後」の社会や経済を見据えてこの状況に向き合わなくてはならない。その際に重視すべきキーワードは「地域ベース」だ。エネルギージャーナリスト・北村和也氏による好評の連載コラム第14回。

このままでは
日本経済の沈没もありうる

新型コロナウイルスの影響が留まるところを知らない。3月に入って出張で乗った東北新幹線は、往復とも乗車率1割程度で見たことのないガラガラぶりであった。また、飛行機は、減便したにもかかわらず青森往復のJALは3分の1しか乗客がいなかった。羽田空港は閑散としていた。東京からの利用客が減ったのはもちろんだが、感染を恐れて東北の人たちが都会に向かうことを止めていることに気づいた。

私的なことであるが、私は家族に感染すれば重症化する者がいてかなり気を付けてはいる。しかし、このまま自粛が続けば日本の経済が先に死んでしまう可能性がある。そちらに対する恐怖は病気を上回りかねないと思う。

一方で、この国のリーダーはいまだに能天気でポイントを外したままである。3月14日の二回目の記者会見では、「活気あふれる笑顔」を取り戻すため「一気呵成(かせい)」に、「これまでにない発想」で「思い切った措置」を講じると話した。

では、実際にどうするのかと次の言葉を待つと、「総力を挙げて練り上げる」と言う。つまり、これから考えるというのである。無意味な修飾語や中身のない決意表明は何の役にも立たない。日本で初めて感染者が見つかってから2ヶ月経って未だに「これから考える」政府は無能だと断言できる。ここに頼っていては、この国は沈没する。

地域における準備と
確実な実行の必要性

同様な危機感を持つ人間は多い。彼らと話すと、例えば、学校の一斉休校について、できるところは再び開校するなど地域によってそれぞれの対応をすべきだという声が聞こえてくる。なんでも、一そろいで右へ倣えになりがちな日本だが、ここを見直した方が良いとの意見である。そろそろ「コロナ後」の社会や経済を想像しながら、この感染症とどう付き合うかを地域ベースで真剣に考える時である。
 
私が関わるエネルギー、特に再エネに関するビジネスは現在好調で、まあ景気が良い部類に入るといってよいであろう。そして、新型コロナウイルスの直撃を受け、景気悪化が最初に影響してくる「地方」が基盤となる事業でもある。だからこそ、そろそろ「全国的な自粛」がもたらす時間などをうまく使って、再生可能エネルギーのビジネスで地域からの反転攻勢をかけるときであると呼びかけたい。

余裕ができた時間は、次のビジネスへの研究と準備のチャンスだと考えるのがよい。

そのためには、地域から元気を取り戻すことを目的に掲げ、自粛に対して柔軟な姿勢で対応しながらビジネスモデルを構築し、事業化へ結びつけることに力を注ぐべきである。

制度変更とチャンス、
再エネの価値増大と
ビジネスモデル化

2020年は、日本のエネルギー事業、特に電力事業にとって激変の年となる。発送電の分離、FIT制度の終焉、複数の電力市場の発足、その他多くの変更が待っている。まずは、これらの把握と研究が欠かせない。

例えば、FIT制度の大幅変更のポイントとなる「地域活用電源」という概念がある。地域で災害時などのBCPに活用できる再エネ施設にFITの買取価格を残すもので、これを知らないと、地域での今後の再エネ施設拡大に大きな支障が生じることは間違いない。

また、この国会に提出されている電気事業法の一部改正案には、配電事業やアグリゲーターを法律上きちんと位置付けるための内容が含まれている。どういうことかというと、配電では、法的に事業として認め、配電網を開放して事業参入を進める考えが背景にある。アグリゲーターについても同様に公的にビジネス扱いをする方向で、これを理解していないとビジネスチャンスを逃す可能性が出てくる。

自粛で浮いた時間は、次のビジネスへの重要なステップに使えるのである。

これまでのコラムでも繰り返し述べてきたように、世界で再エネの価値が急上昇している。RE100やRE Actionへの参加団体が増え、大量の再エネを作り出したり利用や消費したりするニーズが爆発する可能性が高い。そのラインに乗りビジネス化するためには、これまでとは違ったモデルを生み出すことがカギとなる。

例えば、PPA(Power Purchase Agreement)による再エネ施設の建設や運営、事業化は今、手を付け始めなくては乗り遅れてしまうかもしれない

VPP(Virtual Power Plant)は、法的に認められるアグリゲーターの事業に欠かせない仕組みで、構築のための仲間づくりには時間がかかるが、ここが肝である。

次々と手を繰り出す地域

今回の感染症騒ぎとは関係なく、着実に再エネの利活用と地域の活性化を目指す動きが地方に目立ってきている。

一つは、自治体新電力の拡大である。

新電力の経営が厳しいとは、小売電気事業の業界ではほぼ共通した認識となっている。それにもかかわらず、自治体が積極的に関わる新電力の立ち上げが続いている。特に人口30万人以上の地方の中核都市でその傾向が目立っている。長崎県の佐世保市や長崎市、広島県の福山市、関東甲信越の新潟市や宇都宮市などの地方有力都市が名乗りを上げ、実現している。

もう一つは、既存の自治体などがどんどん新しい手を打ってきていることである。

特に、気候危機に対応したCO2削減の宣言が相次いでいる。

「2050年二酸化炭素排出ゼロ宣言」の地方自治体は全国で80(2020年3月11日現在)に達したが、その半数以上が今年2020年の参加である。その自治体の人口の合計は、日本全体の実に48.2%に及んでいる。つまり、日本の半数近くの人口を抱える自治体が2050年にはCO2の排出をゼロにするということを決めたことになる。

実現には再エネ(電力に限らず、熱や交通エネルギーも含む)を爆発的に拡大する必要があり、電力では、地域の発電事業者や新電力の役割が重要さを増している。

日本を変える一点突破

このコラムでも紹介した岩手県久慈市の一連の例を最後に挙げておく。

久慈市は、太平洋に面する人口およそ3万5千人の小地方都市である。二年前に市も出資した自治体新電力、久慈地域エネルギー株式会社を地元の民間企業と一緒になって立ち上げた。その後、市と自治体新電力は次々と新しい取り組みを進めてきている。

まず、昨年の2月に久慈市は他の東北地方の市町村と一緒になって、再生エネ電力の融通などを目的とした横浜市との連携協定を結んだ。現在、久慈地域エネルギーを通して横浜市への電力供給を実現させる取り組みが進んでいる。

昨年夏、久慈地域エネルギーはプロポーザル入札に参加し、岩手県企業局が保有する小水力発電所(久慈市内)からの再エネ電力の購入を落札した。4月からは久慈市への供給が始まる。

昨年10月には、誕生したばかりのRE Actionに久慈市が参加を表明した。2050年までに100%再生エネ電力に切り替えることを目指すものである。久慈地域エネルギーが全面協力し、岩手県の水力発電も重要な供給元となる。

さらに、久慈市は、昨年末に岩手県などとそろって、「2050年二酸化炭素排出ゼロ宣言」を行った。今年になってからは、2月に岩手県北の他の8市町村と一緒に「北岩手循環共生圏」を発足させた。それぞれの自治体の地域資源を活かしながら連携する取り組みで、もちろんエネルギーも連携の重要な柱の一つである。

目まぐるしいまでのこれらの動きからは、地域活性化の実現に向けた地域における『具体的な実行力』が見てとれる。空々しい言葉だけで自己陶酔的に決意を語るだけのものとは、全く対照的な出来事である。

それぞれがそれぞれの場所やフィールドで、知恵を使い、できることから実施していくことこそ求められる。全体がそろうことが目的ではない。必ずしも大きな取り組みでなければいけないわけでもない。

この項のタイトルに示した「地域からの一点突破」、それが地域を変え、日本を変えていくきっかけを作り出すと信じる。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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