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風力発電 約90%は北海道・東北 系統接続の厳しさ増

7年ぶりに導入量が約30万kw台となった風力発電。今後も着実に増え続けさせるためには、系統連系問題の解決が欠かせない。そのための取り組みや課題など、風力発電のスペシャリスト、中村成人氏に語ってもらった。

累計導入量は338万kW
2020年代に1千万kWへ

2016年度の風力発電導入量は推計で約30万kWと、2009年度以来、7年ぶりに30万kW台となりました。確実に増えてはいますが、もう1つ物足りません。単年度の導入量が今より一桁上がった時、国内に風力発電の市場ができたとはじめて言えるでしょう。

2016年度までの累計導入量は推計で338万kW。開発中案件の1049万kWと合わせると1387万kWとなります。政府の2030年度の風力発電導入見通しは1000万kWですが、2020年代の早い段階に前倒しして達成できるものと期待しています。

約90%を占める北海道・東北
厳しさを増す系統接続の制約

開発中の1049万kWのうち、北海道が253万kW、東北が683万kWと、風況の良い場所が多い両地域で90%弱を占めます。この両地域で系統接続の制約が厳しさを増しています。

北海道電力は昨年4月から、風力発電所を系統連系する場合、蓄電池の設置などによる出力変動緩和対策を新たな技術要件に定めました。蓄電池の設置自体は技術的に可能ですが、かなり大きな容量の蓄電池を用意する必要があり、事業の採算性が厳しくなることが予想されます。

東北電力でも昨年5月末、東北北部エリアの基幹系統を含めた送電線の熱容量超過が生じる可能性があるため増強が必要と公表しました。送電系統の増強終了まで風力を含む新たな電源の接続受付は中止。増強には長期間を要するとのことでした。

こうした両社の方針について、再生可能エネルギーの接続可能量の検証などを行ってきた経済産業省の系統ワーキンググループ(WG)で、専門家による議論がなされ、当協会もオブザーバーとして参加し積極的に建設的な意見を述べました。

WGでは、北海道に関しては、風力発電所に蓄電池を設置することに替わる有効な対策について、また東北北部エリアについては、長期にわたる系統の増強工事期間中の対応策など、さまざまな角度から活発な議論が展開されました。

結果、北海道電力は同WGで、変電所など系統側に蓄電池を設置し、必要となる蓄電池の設置容量合計を低減するという選択肢を示しました。同電力では4月12日から、系統側に蓄電池を設置する前提で、新たな風力発電の接続募集を開始することを公表しました。

東北電力も、事故など系統運用上の支障が生じた場合には電源側(発電所側)の制御を行うことを条件に、送電系統増強工事期間中でも新たな接続を可能とする前提で、いわゆる系統増強募集プロセスを実施する予定です。

2017年度も、引き続き系統連系に関する課題の克服に取り組みます。経産省や各電力会社、広域機関とのコミュニケーションを密にして、風力発電の導入拡大が進むよう尽力したいと考えています。

 

プロフィール

一般社団法人 日本風力発電協会 専務理事

中村成人

1972年株式会社トーメン入社。1998年同電力事業本部第一部長就任。株式会社ユーラスエナジーホールディングス専務取締役を経て2014年7月から現職。1972年より一貫して電力分野に携わり、1998年から現在まで約20年間、風力発電事業に従事している。


取材・文/具志堅浩二

『SOLAR JOURNAL』vol.20より転載

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