再エネ利用は農山漁村を救えるのか?
2017/02/26
林業振興から水産業支援まで
再エネを活かす構想を支援
採択となった4地域とは、秋田県湯沢市、長野県塩尻市、長崎県五島市、熊本県小国町、それぞれの協議会による取り組みです。
例えば、塩尻市の構想は、地域の森林の再生や林業の振興を強く意識したものとなっています。県内森林の未利用材・間伐材を燃料とした市内のバイオマス発電所で電気をつくり、地域出資による新電力会社が買い取り、地域の農林漁業者や公共施設にその電力を供給。エネルギーの地産地消を実現するとともに、電力販売による収益の一部を地域の農林業振興に役立てていこうという構想です。市の面積の約8割を森林が占める塩尻市ならではの取り組みといえるでしょう。
五島市では、風力発電を軸とした構想を進めています。海に囲まれた五島市は、日本初の浮体式洋上風力発電の実証フィールドになるなど、先進的な取り組みで知られているところ。洋上風力発電の導入を推進するとともに、水産業との融合を図ることで新たな産業・雇用の創出に取り組もうとしています。
私たちの構想支援事業もその一環と位置付けられ、地域の意向が反映される小売電気事業者の設立から、地域の再エネを使った6次産業品の開発まで、総合的なビジネスモデルの構築が目指されています。
FITや電力自由化の成果を
農山漁村に行き渡らせたい
同様に湯沢市では、電力販売で得られる収益の一部を農山村活性化資金にするとしています。この資金は農林業の振興や加工食品の開発などに活かされます。豊富な地熱や木質バイオマスを有する小国町では、電力だけではなく、熱の供給をも含めたビジョンを描いています。
FIT制度により、農林漁業者自身が再エネに取り組み、農業以外の収益を得る道が拡がりました。電力小売全面自由化により、地域の再エネを地域で使い、地域のお金を地域内で循環させる仕組みをつくることも可能になりました。しかし、まだまだ、農山漁村にその成果が現れてきているとはいえません。
私たちはこれからも、日本の農山漁村を真に豊かなものにしていけるよう、地域の皆様とともに尽力してまいります。
天野絵里氏
農林水産省/食料産業局/再生可能エネルギーグループ課長補佐
1995年農林水産省入省。畜産行政等に従事。競馬監督課競馬監督官、日本政策金融公庫上席課長代理(出向)を経て、2014年4月より現職。
取材・文/廣町公則
※『SOLAR JOURMAL』vol.20より転載。