編集部からのお知らせ

経産省の改正FITのホンネ、2030年以降の政策

改正FIT法が施行され、FIT認定の考え方も大きな転換点を迎えた。「設備認定」から「事業計画認定」への認定軸の変更は、長期的に日本がエネルギーミックス国家を目指すために必要なものだという。2030年、さらにはFIT法のその先にはどのような未来が待っているのか。経済産業省の山崎氏にきいた!

長期安定発電事業として
自立した再エネを目指す

いよいよ改正FIT法が施行されました。本誌前号でも申し上げた通り、この改正は再生可能エネルギーを日本の基幹電源にしていくためのものです。一部に誤解があるようですが、けっして太陽光発電の導入拡大にブレーキを掛けようというものではありません。

基幹電源であるためには、長期間、安定して稼働してもらわなければなりません。長期安定発電事業として、自立していっていただく必要があるのです。そのために事業者の皆さんには、これまでになかった責務も課されることになりましたが、改正の趣旨をご理解いただきたいと思っています。

今回、FIT認定の考え方そのものが、設備の認定から事業計画の認定へと変わりました。これは、従来のFIT法のもとで既に認定を受けていた案件にも適用されます。運転開始済みの案件であっても、改正FIT法に従って、一定期間内(2017年9月30日まで)に事業計画を提出していただく必要がありますからご注意ください。事業計画の策定については、電源ごとに「事業計画策定ガイドライン」を設けています。資源エネルギー庁のホームページ等でご覧いただけますので、必ずご確認ください。

事業計画策定ガイドライン記載事項の具体例

 

エネルギーミックスの先へ
2030年で終わりではない

日本は現在、2030年度時点の電源構成(エネルギーミックス)において、総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を22〜24%にしようとしています。私たちもこれを実現すべく尽力しているわけですが、忘れてならないのは、2030年度で終わりではないということです。2030年度以降も、その比率を落とすわけにはいかないのです。今回の改正FIT法が、再エネの長期安定稼働にこだわるのもそのためです。

事業者の皆さんには、長期安定電源の責任ある担い手として、20年、30年、40年というふうに、しっかりと長い期間、腰を据えてやっていただきたいのです。私たちは、そういう方々を中心とした市場にしていきたいと考えているのであり、その覚悟のない方々には撤退していただくのも致し方ないことかと思っています。

先に触れた事業計画についても、期日までに提出がない場合には、FIT認定が取り消される可能性があります。また、今後は、適切な保守点検や維持管理を怠っている発電所についても、認定取消という可能性が出てきます。これらはすべて、長期安定電源化に向けて、発電事業に取り組んで欲しいからなのです。

再生可能エネルギーは
FITを超えて伸び続ける

例えば産業用太陽光において、FIT期間の20年が終わった後、その発電設備はどうなっていくのでしょう。間違っても、稼働しないまま、ただ放置されているような状況になってはなりません。しっかりとした計画のもと、適正に撤去していただくのは結構ですが、できるなら20 年目以降も発電事業を継続していっていただきたい。FIT頼みではない自立した発電事業者になっていただくことこそ、改正FIT法に込められた想いでもあるのです。

固定価格買取制度(FIT)は、永遠ではありません。あくまで再生可能エネルギーの初期導入を加速させるためのものであり、いつかは、なくなる制度です。なるべく早くFITのない世界にしていかなければ、再生可能エネルギーの基幹電源化・長期安定電源化はありえないともいえるでしょう。

ポストFITの世界には、売電だけでない、多様なビジネスチャンスも満ちています。再生可能エネルギーの新たな可能性に向けて、ともに歩んでまいりましょう。

プロフィール

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課長

山崎琢矢

1996年通商産業省入省。電力事業制度改革、ベンチャー企業育成政策等を担当。米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員を経て、インフラ・システム輸出の制度設計、電力システム改革の制度設計等を手掛ける。2015年より経済産業大臣秘書官を務め、2016年10月より現職。


取材・文/廣町公則

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