政府が2兆円の基金創設で脱炭素技術支援へ。グリーン成長戦略も決定
2020/12/11
「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、次々と計画を打ち出す菅内閣。成長戦略の実行計画では、水素や洋上風力発電を含むグリーン成長が柱に据えられた。脱炭素のための技術支援には、2兆円の基金を創設すると明言。過去に類を見ない巨額の支援策だ。
脱炭素の鍵は重点3分野
PV・カーボンリサイクル・水素
12月1日、菅内閣は第5回成長戦略会議において今後の成長戦略の実行計画を定めた。成長戦略会議とは、経済の持続的な成長を目指し、成長戦略の具体的な推進を目的としている。
成長戦略には「2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略」が盛り込まれた。脱炭素達成の鍵を握るのは、次世代型太陽光電池やカーボンリサイクル、水素といった革新的なイノベーションとされ、3つの重点分野が示された。(1)次世代蓄電池技術などの電化+電力のグリーン化 (2)熱・電力を脱炭素化するための水素大量供給・利用技術 (3)CO2固定・再利用――の3分野だ。
中でも、洋上風力発電は経済波及効果が大きいとして、2040年までに30GWの建設関連需要を創出するとされた。水素は「世界的に有望な、カーボンニュートラル時代の新たな資源」と位置づけられ、水素を造る装置・電気に変える装置・輸送する設備の3つにおいて「世界ナンバーワンにして、世界マーケットを獲得する」とされた。
世界の関連投資の呼び込み狙う
国内の環境意識の変革も急務
菅首相は、12月4日の記者会見において、2050年カーボンニュートラルを達成するための環境投資として「過去に例のない2兆円の基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後10年間、継続して支援」すると述べた。
大規模で低コストな水素製造装置や、再エネの普及に欠かせない蓄電池の低コスト化などに資金を投入する。排出されたCO2は、カーボンリサイクル技術を活用しプラスチックや燃料として再利用を図るという。また、自動車からのCO2排出量もゼロを目指すとされた。こうした政府の率先的な支援により国内の民間投資を後押しし、3,000兆円といわれる世界の環境関連の投資資金を国内に呼び込みたい考えだ。
今回の記者会見でも、菅首相は「環境対応は、もはや経済成長の制約ではありません」と強調した。これは2050年の脱炭素実現を宣言した所信表明演説でも言及されたフレーズだ。前例のない巨額の投資が、国内の環境意識の変革も牽引することが望まれる。(参考『菅首相、所信表明で「2050年に温室効果ガス排出ゼロ」を宣言』)
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)