さらばビッグスリー EV革命は自動車業界を変えるか
2018/02/27
新規参入で目立つ
ICT企業の存在
新規参入組で目立っているのは、グーグル、アップル、パナソニック、ソニーなどのICT企業。このうち、グーグル、パナソニックはEV本体の製造に乗り出す予定はなく、自動運転技術の開発に特化すると表明しているが、アップルはEVそのものを開発中とみられている。ソニーは、2017年10月にAI対応のEVを披露したが、EV本体に参入するかどうかは不明。
筆者は、数年前に学生相手に、「ICT企業がEVを作ったら関心あるか」、という質問をしたことがあるが、「アップルカーなら是非買いたい」という意見が多かった。筆者は、密かにソフトバンクにも期待している。
中国ではインターネット企業群によるEV参入が相次いでいる。主なところは楽視、蔚來、小鵬、前途、車和家等。その中で先頭を切っているのが蔚来(ネクストEV)で、2018年から出荷予定のスポーツタイプ多目的車(SUV)「NIOES8」は1回の充電で約500キロ走行でき、テスラ「モデルX」の対抗馬と見られている。航続距離でほぼ同等。価格では「モデルX」より4割程度安いので世界市場に打って出れば面白い勝負になる。
増加する新規参入
その陰にある失敗
ただし、光あるところに陰あり。楽視(楽視網信息技術)創業者の賈躍亭董事長は「中国のジョブス」と呼ばれ、次々と新規分野に参入し、EVの開発も開始していたが、急拡大が災いし会社の資金繰りが悪化。賈躍亭氏は2017年7月に、董事長職を含む全ての役職を辞任すると発表した。
この影響をもろに受けているのが、シリコンバレーのEVベンチャーであるFaraday Future(ファラデー・フューチャー)。2017年7月、アメリカ、ラスベガス北部で建設に入っていた新工場の計画を中断すると発表した。楽視の出資を受けているが、楽視の資金繰り悪化で計画が頓挫している。
新規参入があれば失敗例も増えてくる。しかし、多少の波乱はあっても世界のEVシフトの大きな流れは変わらない。
プロフィール
村沢義久
環境経営コンサルタント (合同会社 Xパワー代表)
東京大学工学修士。スタンフォード大学MBA。経営コンサルティング会社日本代表、ゴールドマンサックス証券バイスプレジデント(M&A担当)などを歴任の後、2005年から2010年まで東京大学特任教授。2010年から2013年3月まで同大学総長室アドバイザー。2013年4月から2016年3月まで立命館大学大学院客員教授。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。
Twitterアカウント: @murasawa
「SOLAR JOURNAL」vol.24より転載