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全国24万基の鉄塔を総点検! 夏を前に技術基準の見直し始まる

全国の鉄塔の総点検が、まもなく完了する。2019年の台風15号の停電被害を受け、経産省が送配電各社に指示していたものだ。今年6月までに、優先度の高いものの修繕を終わらせる予定。今後は、鉄塔の保安に関する技術基準についても見直しを始める。

総点検は99%完了
550基を6月までに補修

2019年9月の台風15号では、千葉県内の送電用の鉄塔2基が倒壊し、約11万軒の停電が発生した。この事故の原因は、鉄塔が位置する場所の特殊な地形によって突風が発生したためと推測されている。

鉄塔の技術基準で求められる風圧は、40m/sとされていた。しかし、台風の突風が特殊な地形によって約50m/s、最大瞬間風速で約70m/sに上ったと考えられている。

こうした事故を受け、経済産業省は今年1月、10エリアの一般送配電事業者と電源開発株式会社に対し、鉄塔の総点検を指示していた。総点検の対象は、全国の全ての鉄塔だ。さらに、倒壊した鉄塔と同じく山の急斜面に立地した鉄塔がないかどうかも確認する指示が出されていた。

3月23日の「令和元年度台風15号における鉄塔及び電柱の損壊事故調査検討ワーキンググループ」では、全国約24万基の鉄塔のうち、99.2%の総点検が完了したことが報告された。全ての鉄塔において、技術基準を下回るものはなかったという。

ただし、今年の台風シーズンを前にボルト交換や補強などの必要のあるものが約1.2万基あり、そのうち優先順位の高い約550基について、今年6月までに補修する予定となった。

さらに、倒れた鉄塔と似た立地条件のものは、突風が発生するリスクが高いとして、太平洋側の17基について、気流のシミュレーションや強度解析、必要に応じた改修を進めるとした。

技術基準は民間規格
国の省令とする方向を明示

鉄塔の安全性に関する技術基準についても、見直しの方向性が示されている。現行の風速40m/sという基準について、「10分間平均」であることを明確化。今回の事故のような急斜面という地形も、特殊な類型として考慮する。

これまで電圧の高い特別高圧に限り、連鎖的に倒壊しないように設置するとされていたが、電圧に限らず必要な条件として加えられた。

現在、鉄塔の技術基準は「送電用支持物設計標準(JEC-127)」などによって定められている。しかし、この基準は電気規格調査会という民間団体が決めたものだ。経済産業省による省令では、達成すべき目的や目標といった機能性を示すにとどまっている。

今回の見直しでは、民間団体の定める規格を見直しとともに、法的拘束力のある国の省令として正式に位置づける方向だ。

DATA

令和元年度台風15号における鉄塔及び電柱の損壊事故調査検討ワーキンググループ


文/山下幸恵(office SOTO)

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